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見返しては、振り返る。 ８

『アレクセイと泉のはなし』 撮影機材：FUJIFILM FinePix F10 撮影日：2010年9月 2011年2月・3月 　葛飾の図書館で働いていた２０１０年の秋ごろ、自分が作っていた写真のホームページ（ＪＲＰ荒川流域支部）内に、『眠る図書館』（このサイトの下部のほう）という図書館に所蔵する本を紹介するというページをはじめた。 　Twitter（現 X ）が普及し始めてきたころなので、サクサクと本の紹介をしたいところだったのだが、図書館という施設の性格上、写真の表紙を掲載（けいさい）するにも出版社に許諾（きょだく）が必要とされるので、現在でもはじめるとなるとかなりハードルが高い。 　ネット（やSNS）の影響力がどれほどのものかわからない時代だったから、このときはたまたま運よく、当時の館長の許可が得られて作ることができた。 （この数ヶ月後、Twitter（SNS）の影響力を、まざまざと見せつけられることになることになるとは思いもよらない） 　館内の書架（しょか・本棚のこと）を背景に、本の表紙と背表紙の写真を載（の）せ、みじかいエッセイ風の文章を入れることと、写真のホームページだったので、写真関連の本を紹介しようということは考えていたのだが、じっさいにどんなページになるのかは写真を撮ってみないとわからない。テストとしてはじめて撮影した本が、本橋成一の写真絵本『アレクセイと泉のはなし』だった。 　撮影したのが、２０１０年の９月のことだった。この本が出版されたのは２００４年で、１９８０年代のチェルノブイリ（チョルノービリ）原発事故に関わるはなしなので、あまり借りられる本ではないと思っていた。図書館でひっそりと埋もれていってしまう本というイメージもあったが、こうした本をゆり起こすのも図書館の勤めだという思いもあり、『眠る図書館』というタイトルができあがっていった。 　『眠る図書館』は始まったものの、『アレクセイと泉のはなし』をまだ紹介できないでいた。撮影した表紙の写真が気に入らなかったのか、撮影した画像のファイルを見返していると、２０１１年の２月１１日に表紙の部分だけ撮りなおしている。 　そして『アレクセイと泉のはなし』を撮影しなおしたちょうど１ヶ月後の２０１１年３月１１日、東日本大震災が発生した。 　電車は止まってしまっていて、どう帰宅するかを考えていた。 　テレビは、森林火災の映像が流れていて、館内のパソコンでTwitterの情報ばかりを追いかけていた。さいわい、バスは動いていることがわかり、図書館のちかくのバス停から綾瀬まで出て、綾瀬から花畑団地行きのバスで帰ることにした。 　まったく余裕がなかったので、そのときの写真は残っていないものだと思っていたが、綾瀬でバスを待っている写真と、バスに乗り込む写真が数枚あった。 　とうぜん、私のような人間が、現地に赴（おもむ）いて被災地を撮影したり、ボランティア活動したりすることはなかった。 　私がやれることといったら、せいぜい『アレクセイと泉のはなし』を、『眠る図書館』にアップすることぐらいだった。 『眠る図書館』で紹介した本 『アレクセイと泉のはなし　本橋成一』（２０１１年３月）

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