コラムコラム
なつかしいネガフィルムが出てきた。１９８８年の母校（高専）の学園祭を撮影したものだ。 そこにクラス（学科）で、いや学年で唯一（ゆいいつ）の女子学生だった子が、校庭でライブをやっていて、レベッカ（当時、流行（はや）ってたなぁ（笑））のコピーを歌っている姿があった。 NOKKO（ノッコ・レベッカのボーカル）とは、似ても似つかぬ容姿（ようし・ルックス）の彼女の、このときのライブのことはかなりおぼろげなのだが、ふと、クラスの卒業旅行のときに彼女と宿泊先のホテルで、なぜか２人ならんでドラマを見ていた光景（こうけい）が鮮明（せんめい）に浮かび上がってきた。 ２人で見ていたドラマは、内館牧子の出世作となった『想い出にかわるまで』（１９９０年・ＴＢＳ）。今井美樹と松下由樹の姉妹が『トレンディ俳優』としてブイブイ言わせていたころの石田純一を取り合うという、ドロドロの恋愛ドラマだった（笑）。 むかしは、「写真とはなにか」とか大上段に構（かま）えて考えていたけれど、目の前で見ているなにかから、記憶と想像力が合わさって見えてきたもの（つまり『想い出』）なのではないかと、いまでは思い始めている。 「目に焼き付ける」という行為（こうい）は、写真が登場するまえから存在するし、視覚情報にたよらなくても、いまそこにある状況が、記憶と想像力ですがたやかたちとして思い浮かべられる（イメージできる）のなら、それを写真と呼んでもいいのかもしれない。 アナログからデジタルに置き換わり、インターネットが登場してSNSがあたりまえに使われるようになってくると、写真は大きく様変わりしてしていった。 いま（現在）の情報発信を、リアルタイムでおこなうことを強（し）いられるようになり、他の人たちに承認（しょうにん）されたいがために、見映（みば）えのよさそうな写真をSNS上に大量に投稿（とうこう）しなければならなくなった。 「いいね」がつけばそれで満足であり、基本、写真は見返すこともなく、撮影したことすらもすべて忘れてしまう。 しかし、こうした写真は、タイムラインに膨大（ぼうだい）に蓄積（ちくせき）される。クラウド上に整然とアーカイブされるので、記憶にたよることなく、過去の写真を瞬時（しゅんじ）にピックアップできてしまう。 過去の写真は、鮮明（せんめい）に保存されているのだが、たとえ見返したとしても、それが『想い出』にかわることはない。デジタル（現在だとおもにスマホ）で撮影されたものは、写真と言わずに『画像（データ）』と呼ばれるようになった要因（よういん）がここにある。 『想い出』にかわらなくなってしまった画像は、さらに見映（みば）えを追及（ついきゅう）するようになり、画像を加工し始めるようになっていく。現在は、画像の加工をAIが補（おぎな）うまでに発展してしまった。 記憶や想像力にたよることのない、写真の見かたを求められるようになった現在に感傷的（かんしょうてき）になることもできるのだが、写真そのものの歴史はまだはじまったばかりで、これからも変わり続けていくことが予想される。 AIが加工した画像と呼ばれている現在の写真も、数十年、数百年後には『想い出』にかわるかもしれない。 （そのころ私は、もう生きてはおりませんが（笑）） |
 SNSの タイムラインを、 スマホで 必死に 追っかけている現代人には、 『想い出』を 振り返る必要性が もう ないのかも しれませんね。 |
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