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  『三島由紀夫の家』 篠山紀信／撮影 篠田達美／文 美術出版社 刊 出版年：1995.11 請求記号：910.2 ﾐｼﾏ 写真（オリジナルプリント）や写真集を蒐集（しゅうしゅう）する人たちは、写真をワインのように取り扱う人が多い。 赤か白か（モノクロかカラーか）、銘柄（写真家）、収穫年（出版年）などを考慮に入れ、自分の好みのワイン（写真集）をセラー（本棚）に並べ、熟成する（価値が出る）のを楽しむ。 そうした人たちにとって、篠山紀信の写真は異質な存在だ。 篠山紀信は、自分の写真が薄暗いワインセラーに大切に保管されることを望んでいない。 篠山紀信の写真の醍醐味（だいごみ）は、自動販売機の缶コーラのように、買ったその場でゴクゴクと飲み干す感覚にあるのだと思う。 『三島由紀夫の家』は、作家・三島由紀夫が生前、暮らしていた家を篠山紀信が撮影した写真集である。 この写真集が出版されたのは１９９５年。すでに１５年の年月が流れているが、あらためてページを開いてみると、篠山の写真はワインのように熟成される（古びる）ことを拒（こば）むかのように、新鮮な驚きを見る者に与えてくれる。 篠山紀信はつねに、篠山自身の目で、いま（現在）見た、ありのままの世界をカメラにおさめようとする。 時代を記録するといった、いま（現在）あるできごとが過去へ向かおうとすることを、篠山はかたくなに拒否する。 いま（現在）あるできごとが世界のすべてなのだと、篠山の写真は訴えかけている。 その姿勢は、三島由紀夫であろうと雑誌の表紙やグラビアを飾るアイドルであろうと、変わることはない。 篠山紀信という誰もが知っているブランドのコーラ（写真）は、ページをめくるたびに、はじける炭酸のように刺激的にわれわれののど（視覚）をうるおしてくれる。 協力：葛飾区立お花茶屋図書館 |
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